疾病治療を主たる目的とし、医療資源が比較的に豊富な病院とは異なり、在宅医療の現場では時として医療資源に限りがある環境でいかにして病と共に療養するかが問われます。元々不確実な要素が多い医療分野の中でも、在宅医療は確率されたエビデンスや判断材料が乏しくなりがちでもあります。そのため、在宅での療養生活に不安を感じる方も多くいらっしゃいます。また、在宅での療養生活では個別に育まれてきた人生観・社会背景など多様な要素への配慮が求められます。我々は、各々の患者様・ご家族様の過ごしてきた道のりを敬いながら、どうしたらよりよい時を過ごせるのか共に考えます。

容態に合わせて計画的に訪問し、生活環境も含めて総合的に診療することで、患者様の安定した状態を目指します。容態変化があった場合には随時対応いたします。患者様とご家族様のご意向に寄り添いながら個別性に応じた医療を提供することで、住み慣れた環境で安心し満たされた療養生活を共に目指します。在宅医療は多様性に富む現場と心得ます。意思に寄り添って最期まで在宅で過ごすために最善を尽くすことはもちろん、より高次な医療機関と積極的に連携した診療を展開することもあります。

また、我が国は今、世界に先んじて超高齢社会を迎えています。社会構造の変化に伴い、経験のないさまざまな問題に直面します。これまで医療に臨床・研究・行政と多面的に携わってきた経験を生かし、培ってきた知識・技術を社会に還元する努力を惜しみません。それぞれの活動に簡単な道はありません。各方面の専門家と連携しながら、多角的な視野を持って活動に携わり、関わる皆様とよりよい共生社会を創造していくために尽力します。

神谷 諭